2008年02月13日

浜尻の方円塔

 むかし。
浜尻町に、大乗庵という、隠居寺があった。
 その庵に住む、何代目かの庵主は、生まれつき歯の性が悪く、長いこと歯痛に悩まされていました。
 その痛みといえば、並みの痛みではありません。
 まるで頭の中に、何本ものきりを、もみこむようで、果ては歯が痛むのやら、頭や耳が痛むのやら、わからないくらいでした。
 庵主は、わらにでもすがる思いで、効くといわれる薬草から、加持祈祷にいたるまで試してみましたが、何の効き目もありません。
 手だてのつき果てた庵主は、
(世の中には、わしのように歯痛で苦しむ者も多かろう。この上は、われとわが身を仏となし、歯痛に悩む多くの人を救おう)
と決心したのです。
 そこで檀家の人々を集めてわけを話しました。
そして身を清め、白装束にわらじをはくと、かねを手にしてひつぎに入り、
「わしが生きておる間は、かねをたたき念仏を唱える。かねの音が止んだら、往生したと思うてくれ。」
 そういい残して、ひつぎを、土に埋めさせました。
 かねの音は三日三晩鳴りつづけましたが、次第に弱々しくなり、やがて、静かになりました。
人々はひつぎを埋めた土に伏して泣き、庵主の冥福を祈りました。
その後、庵主の徳をしたう人々によって、ひつぎを埋めた上に、方円塔が建てられました。
この方円塔を、歯の痛む人々が拝むと、たちまちにして、痛みが治まったということです。
いま、浜尻町にある方円塔は、後に建て替えられたものだそうですが、塔の右上部に、赤茶へたしみのようなものがみえるそうです。
そのしみは、庵主の尊い血潮が、にじみでたものと思われて、永く人々の信仰を集めてきたということです。


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Posted by はなもぐ  at 21:25 │Comments(0)むかしばなし

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